ザ・マンション管理士マインド対談2016

■この10年「マンション管理士の業務展開編」

【川原】
マンション管理士の業務展開にも、大きな変化があった10年でした。まず、10年前には考えられなかったぐらいの頻度で、相談や仕事の依頼を受けることになっています。マンションの管理について専門家を活用して適正化しようとする管理組合が年を追うごとに確実に増えていることを実感させられます。

【親泊】
そうですね。プロナーズ認定者であることにかかわらず、10年前から今日まで地道な努力を継続しているマンション管理士事務所は、例外なく同じ状況になっているのではないでしょうか。また、10年前に比べると、超高層や再開発といったタイプの大規模なマンションからの相談やコンサルティングの依頼が目に見えて増えた点も、特徴的な変化と言えますね。

【川原】
いま話した「仕事の依頼」には、他人との競争を伴った見積参加(エントリー)の依頼が含まれるわけですが、この10年の大きな変化として、大規模なマンションだけではなく、小規模なマンションにおいても、マンション管理士やコンサルタントの選び方として表立った「競争」を導入するケースが多くなり、ここで自分達が選ばれるための努力も、平素からのライバルの研究など、そうした競争に対応できるものが求められる時代になったということが挙げられるでしょう。管理組合側の要求水準も高くなっていますよね。

【親泊】
10年前のマインド対談では、現時点でマンション管理士の活用が進んでいないとしても、いざ管理組合がマンション管理士の活用を思い立てば、ほぼすべての管理組合において、多くのマンション管理士の中からできるだけ優秀なマンション管理士を選んで活用することになるのは間違いないことなどを確認しました。

【川原】
その点については、業務展開を志向するマンション管理士において、「選ばれる」という意識が甚だ希薄と思えたことに対する警鐘のメッセージを込めるものであったとおり、そもそも当時からそうだったわけです。

【親泊】
そうでしたよね。現在では、例えば、管理組合からマンション管理士会に対して会員マンション管理士の紹介に関する依頼が入るとしても、あらかじめ会でフルイにかけたうえで適任の複数名を紹介してほしいという依頼が多いです。

【川原】
千葉県内では無敵と思っていた重松理事が、エントリーした県内のマンションのコンサルティング案件の競争で、他のマンション管理士に負けることもあるような時代になっています。もちろん、管理組合側の評価の仕方には能力や品質だけでなく金額も大きなウェイトを占めているという点も否めません。しかし、言い換えれば、プロナーズの運営者メンバーではないライバルのことを意識する必要が生じることにもなりました。

【親泊】
その点については、前回のマインド対談の直後あたりから、自ら業界出身者であることを明らかにした若手のマンション管理士も台頭してくることになりました。代表理事と同世代のマンション管理士でしたね。

【川原】
そうです。ネットを通じた情報発信の限りでも、他のマンション管理士やコンサルタント会社との競合事例の分析結果を公表したり、それまで多くのマンション管理士が苦手としていた「他のマンション管理士との差別化」のアピールをスマートに繰り広げたり、「ダメマンション管理士」の分析とか「求められるマンション管理士」の考え方がわりとしっかりしていると思わされた点で、それまでにはなかったライバルが現れた印象がありました。

【親泊】
プロナーズでも、過去10年の間で「良い管理士の選び方」を策定して公表し、これは実質的にマンション管理士の差別化に関するメッセージであったわけですが、それなりに遠慮?も考慮した内容であったところ、この若手マンション管理士の差別化については、何の遠慮もない、しかし的を得ている点で、センセーショナルな内容でした。

【川原】
一言で言えば、このマンション管理士は、それ以前から業務を展開していたマンション管理士の誰よりも、差別化のPRというものが上手でした。私も彼の発信力や発想から学ぶ点が多くあると感じています。もっとも、求められるマンション管理士の条件として「管理会社に勤務経験があること」などを掲げていた点については、プロナーズ的には、もろ×ですけどね(笑)。

【親泊】
そのほか、最近では少し下火になったようにも感じますが、管理委託契約の見直しのコンサルタント業務において、管理経費の削減額に対して一定割合の報酬の支払いを条件とするコンサルタント会社と競合するケースも、かなりありました。こうしたコンサルタント会社の報酬額というのは、超高層マンションや大規模な団地では、異常な高額になるわけですが、それが意外と管理組合側に受け容れられていた現実に対しては、報酬体系以外の面で彼らの選ばれるための努力を見習わないといけないとも思わされたものです。

【川原】
そうですね。一方で、彼らの報酬は当初「年間の削減額の50%」といった基準が主流であったのが、近年はこれが「100%」になっているようなウワサがあります。推測ではありますが、この点については、さらなる工夫というより、近年管理会社のリプレイスの案件がひと頃に比べてかなり減少しているという声もよく耳にすることから、彼らに対する依頼件数が次第に減少している結果ではないかとも思っています。

【親泊】
報酬といえば、マンション管理士の歴史の中では、マンションの大規模修繕工事の事業運営支援において、いわゆる「バックマージン」を拠り所とする裏街道のコンサルタント業務を「やって当然」と位置付けていたマンション管理士などもいました。

【川原】
この10年の間に、管理組合の大規模修繕工事の事業運営支援の名を借りた業者間の出来レースとバックマージンの存在を指摘する専門家がありましたね。もっとも、ここに登場するのは、基本的に設計事務所と施工会社だけでしたが。

【親泊】
仮にマンション管理士がそうした裏街道的な業務の実績を積み上げたところで、おそらく見積書や仕様書、工程表もない業務でしょうから、実績として示しようがなければ、評価のされようもありません。したがって、仮にそのマンション管理士が明らかであろうとも、ライバルなどと位置付ける必要はありませんね。

【川原】
そもそも、そんなマンション管理士として有名になってしまったら、二度と表舞台には出てこられないでしょうし、おしまいですね。それに、本当にそのようなことをやっているマンション管理士が管理士会の会員でもある場合、それを巡る不祥事などが明らかになって、煩わしいことになるおそれもあるのではないでしょうか(笑)。大規模修繕工事だけではなく、我々の場合、管理会社の選定にもかかわる場面がありますし、そういった業者選定の場面でのバックマージン等には職業倫理としてプロナーズでも厳に慎むことをルールとしてきました。当たり前のことではあるのですけどね。

【親泊】
第三者管理者や管理組合役員としての理事、監事など、当事者としてマンション管理士が登用されるケースも少しずつ増えています。ここにおいても選ばれて登用される関係にあることは間違いありません。

【川原】
特に、理事会廃止型の第三者管理者については、マンション管理士を専業としていない者が活用されるようなことは、ちょっと考えられませんね。

【親泊】
個人的に7年来、都心部のマンションの第三者管理者に就任していますが、このマンションの専有部分の権利変動によって、途中で予期せぬ者が出現する経験をさせられました。総戸数の約半数の専有部分の区分所有者と通称プロパティマネジメントと呼ばれる契約を締結している不動産業者がこれらの専有部分の区分所有者の代理人として総会に出席し、私の半額以下の報酬額で第三者管理者の業務の受託にも対応できるという論理を繰り広げた以降、この業者の管理者選任の承認決議を目的とする臨時総会が2年越しで2回も招集されたりしました。結果は、2回とも承認に至りませんでしたが。

【川原】
私の経験上、近年の不動産の運用を数字や金融資産のように取り扱う傾向の業者というのは、何かと地道で丁寧な手順や面倒事を敬遠するもので、マンションの管理や管理組合の運営といったことは、本来かなり苦手な分野に当たるのではないかと思います。にもかかわらず、なぜそんな低廉な報酬で管理者になることができるのか、理解に苦しむ話ですね。いま話題にしている私達のライバルに当たるのかどうか、ちょっとコメント不能ですが、規約に特別な定めがなければ、基本的に過半の賛成があれば理屈抜きで地位が交替しますから、何より平素からの誠実な職務の遂行が継続のための努力につながるという話になりますね。

【親泊】
プロナーズ認定研修では、ユーザー本位で地道にコツコツと実績を積み上げていくことでマンション管理士の業務が成り立つことをレクチャーし続けています。この点は、国土交通省が平成14年6月に公表したマンション管理士活用方策検討会報告書を通じて示唆されているとおりですが、この10年間に、これと異なる新たな業務展開の手法がビジネスモデルになっているようなこともありませんね。

【川原】
私の知る限りで、全くありませんね。当初から国が示唆しているとおり、私達の業務の成否は、「管理組合の抱える諸問題の的確な解決、様々な実績の積み上げ、信頼の獲得」がすべてであり、この点は永久に変わらないのではないでしょうか。

【親泊】
いずれにしても、十分な実績がないマンション管理士の業務展開において、看板を上げて待っているだけでは、見積参加はおろか、相談の声も掛からないことが明らかな時代になったと言えますね。こうした時代の到来を見越して、マンション管理士が選ばれて活用される関係にあることをアピールしたプロナーズ事業の実施には、大きな意義がありました。

【川原】
10年の間に実績が明らかなマンション管理士や同業他社による競争激化の時代に突入しました。よい意味での競争が結果としてサービスの向上とエンドユーザーのためになって行くのだと思います。

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