区分所有者の父親が横領、本人に連帯責任を追及 弁護士が事例報告 第16回全国マンション問題研究会 続編

投稿日:2013年10月23日 作成者:福井英樹マンション管理士総合事務所
http://www.h-fukui.com/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=133

 第16回全国マンション問題研究会が9月28日・29日、北海道函館市の函館弁護士会会館で開かれた。当日は、弁護士12人が11事例を報告、検討を行った。うち、奈良のマンションで区分所有者の親族が管理組合のお金を横領した場合の連帯責任について前回のニュースでピックアップいたしました。その続編です。
各弁護士の考察を紹介いたします。
小倉知子弁護士 賃貸借する時に、賃借人に管理規約を守らせる制約みたいなものを出すことがあるが、Aについてはあったのか?
伏見康司弁護士 ないですね。
石川和弘弁護士 区分所有者に責任があるとは理解できないのが率直な所だ。規約上、住んでいる区分所有者の親族が理事長になれる。理事長の地位は、管理組合と理事長に就任した者の委任契約に基づく善管注意義務違反という話であって、それを丸ごと身元引き受けするみたいな発想はどこからくるのか。居住者として迷惑を掛ける行為について責任を負うのは分かるが、なぜ理事長としての職務執行について与えた損害を区分所有者が責任を負うのか。
伏見康司弁護士 宮崎地裁も規約で「管理共有物の管理に関して共同の利益に反する行為をしてはならない義務」がはっきり定められている。ただ判決は特にそれを意識して書いている風ではない。共用部分であっても守らせる義務があることがきめられているうえでの判断で、A自身の委任契約というところから連帯責任にいけるのかは不安がある。ただ区分所有者が知らない間に電気を盗んでいたような話なので故意・過失がないような事案で、履行補助者の理論を適用しているので素直に当てはめれば、適用されて良いのかなと考えている。
石川和弘弁護士 委任契約に基づいて理事長としての職務についての履行補助者だと認められるとすれば、理事長のほうが報告をお求められれば区分所有者の方に報告しなければならないとか、そういう関係がないと履行補助者というの言いづらい。
鎌野邦樹・早大法科大学院教授 手掛かりは規約17条をどう見るか。どうやらこの趣旨は、基本的には区分所有者が輪番制などで相互に理事等の負担をして管理を行うが、いろいろな都合で区分所有者が理事等を出来ない場合があるだろう、ということで特別に配偶者、区分所有者の1親等の内の者まで理事として認めようというもの。仮に、そういう立場に立つと、本来は区分所有者の責務だということ。そういった意味では規約17条・34条2項の規定などを用いて、管理組合の規範として特別に連帯責任を負うという定めを設けているんだという考え方に立てば、裁判官を説得できるかなという感じがする。他方、民法418条(過失相殺)で、裁判所が損害賠償の責任およびその額を定めるときの管理組合の過失はかなり大きいと思うので、そういう判断がなされると予想される。
<コメント>
Aは「履行補助者」に当たり、区分所有者Bは、Aの故意・過失による義務違反について損害賠償責任を負うという主張を追加しようと検討している。比較的参考になる判例として、昨年11月12日の宮崎地裁判決があった。
区分所有者と同居する賃借人Yが、区分所有法6条1項または規約の定めに違反して、共同棟の電気を自室に引き込んだ旨を主張して、管理組合がYに民法415条に基づく損害賠償を求めた事案で、区分所有者に故意・過失がなくて、専有部分でない箇所についての不法行為的な事案なので、ちょっと近いのではと考えている。
管理規約には、管理共有物の使用に関して共同の利益に反する行為をしてはならない、所有する住宅に居住する者に組合の目的に反する行為をさせてはならない旨の規定があった。
宮崎地裁は、履行補助者の理論を認め、「賃借人やその同居人も、同部分を使用収益する以上は、区分所有者の義務の履行を補助する関係にあると見ることができる」とした。
そして、「区分所有者は、その所有分を賃貸して収益を得ている以上、賃借人ないしその同居人が他の区分所有者(組合人)に対して、損害を被らせた場合に、自らに故意過失がない限りこれを賠償する責任を負わないと解するのは妥当ではない」と判断した。
宮崎地裁は、規約行為違反に基づく連帯責任は認めたが、区分所有法6条1項の共同行為違反については、履行補助者の理論を適用することはできないと判断している。
当該マンションの管理規約
第17条(管理費等の管理)
1項 区分所有者より支払われた管理費等は、管理者ならびにその指示する者が「善良な管理者の注意』をもってこの管理に当たる。
第6章 使用上の注意
第34条(同居家族・代理占有者の使用)
1項 区分所有者は、その同居家族およびその専有部分を貸与等により第三者に占有させる場合には代理占有者に、本規約およびこれに付属する使用細則などによる使用上の制約を遵守させる義務を負う。
2項 区分所有者は、その同居家族または代理占有者の行為について、管理者または他の区分所有者等から苦情の申し出がある場合には、区分所有者の責任において処理解決する。また、その同居家族または代理占有者が本規約および使用細則などの定めに違反して、他の区分所有者等に損害を与えた場合には、連帯して損害賠償の責任を負わなければならない。
管理組合規則
第17条(役員の選出)
1項 集会の決議により理事長を置く。また現に本マンションに居住する区分所有者、その配偶者、および区分所有者の1親等以内のうちから、集会で理事および監事を選任する。
第21条(役員の誠実職務執行義務)
役人は法令・管理規約および本規則などの付帯規則ならびに集会・理事会の議決を遵守し、管理組合および組合員全体のために誠実にその職務を執行する義務を行う。
マン管新聞第920号より。


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