マンション管理新聞第1067号より抜粋。
専有部の配管更生・更新工事における不具合による、下階への漏水事故が増えている。住宅あんしん保証(本社東京)の渋谷貴博開発営業部長代行によると、2017年度の専有部配管に係る工事における、大規模修繕工事瑕疵保険金支払い件数は15件。「例年に比べて多い」という。「専有部というと施設賠償責任特約か個人賠償責任保険で対応しがちだが、管理組合発注工事であれば、専有部の床下横引き管も補償の対象となる。ぜひ活用してほしい」と、渋谷氏は訴える。
昨年10月ごろ、埼玉県内のマンションで、4階から漏水し、3階住戸の天井に染みができる事故が発生した。
被害住戸の住民は当初、上階住民の過失を疑った。ただ、配管更生工事から2年しかたっていなかったため、理事会や管理会社のアドバイスも踏まえ、瑕疵の可能性も視野に入れて調査を依頼した。
調査の結果、専有部床下配管から漏水が発覚。継ぎ手部分に十分な接続・設置工事を施しておらず、接続不良状態のまま工事を完了していたという、施工側のミスが原因だった。
事故発生後の対応はスムーズだった。
渋谷氏は「工事会社が瑕疵保険に入っていたから工事会社も(居住者に)責任転嫁しなかったし、上階住戸の住民と、下階の被害住戸の住民の関係も悪くなることはなかった」と振り返る。
「工事会社が瑕疵保険に入っていたことを、間に入った理事会や管理会社も把握していたし、調査費は多少保険金として支払われるから『すぐに調査しよう』となった。工事会社も瑕疵保険の適用範囲などを理解して『保険金で補修対応できる』安心感から、素早く補修に取り掛かれた」
瑕疵の補修費や被害のあった天井の補修費、事故調査費として、保険金150万円が支払われた。工事会社は保険期間を10年間とする同社の「給排水管路工事に係る保険期間延長特約」における、支払限度額4000万円の保険金コースに加入していたため、残る8年間で瑕疵保険支払いを受けるようなことがあっても3850万円残っている、ということになる。「管理組合、住民、工事会社共に安心感がある」(渋谷氏)
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給・排水管路工事に係る瑕疵保険を含め、瑕疵保険全体の加入件数は増えてきているという。特に今年に入ってからは「申し込みラッシュ」が起こっており、1月の申し込み数は棟数ベースで65棟、2月は月別申し込み数過去最高となる125棟の申し込みがあった。3月も100棟程度の申し込みを見込んでいる。
渋谷氏は申し込みが急増した理由を「『マンション適正化診断サービス』の評価事項に瑕疵保険の加入の有無が加えられたことが大きい」と話す。
同サービスでは、一般社団法人日本マンション管理士会連合会所属管理士による診断の結果、維持管理状況が良好なら、日新火災海上保険が発売する「マンションドクター火災保険」の保険料の割引を受けられる。
昨年、評価項目が見直され、今年1月1日から、給・排水管改修工事などで、工事会社が瑕疵保険を契約している場合、評価点が高くなるよう評価された。
そのため「この春実施する大規模修繕工事に向け、高経年の大型団地による『駆け込み申し込み』が起きた」と、渋谷氏は説明する。
今回の「診断サービス」との連携など、関係団体との結び付きも申し込み棟数にいい影響を与えている。「申し込み数をキープできているのも関係団体と情報交換し、情勢に適した商品改定などを行っているから。他社で行えない部分もカバーできていると思う」
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瑕疵保険の普及・啓発促進にも力を注ぐ。3月7、10日に同社と日新火災の共催で行った管理組合セミナーには、両日合わせて約90人が参加した。当日は渋谷氏が瑕疵保険の概要を解説。「瑕疵保険についても何も知らないという方たちも、セミナーが終わるころには『良く理解できた』と言って帰っていただけた」と、セミナー開催の手応えを感じたという。
とはいえ、全体的な普及には「まだまだ」という渋谷氏。「今や管理組合や管理会社が、瑕疵保険加入を工事会社の見積もり参加の条件としているのが主流となってきている」とした上で、「工事会社は工事費の0.5%程度を負担すれば、管理組合に安心を提供できる、いざというとき対応できるよう、プロとして対策を講じておいてほしい」と呼び掛ける。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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