去る6月11日、大阪の綿業会館で、平成26年度「区分所有管理士」登録更新講習を受講してきました。わずか30名程の登録区分所有管理士の為に篠原みち子弁護士の生講義で、当該資格に対する(一社)マンション管理業協会のこだわりと思い入れが感じられるものでした。
内容はマンション管理に関わる紛争事例(判例)9件の紹介と解説で、非常に勉強になりました。
 特に印象的だったのは、各区分所有者の契約に基づいた駐車場料金が特定承継人にも請求できるとした平成20年の東京地裁判決判例です。
 当該判決は、高裁、最高裁とも棄却していますので、結審済みです。

 当該駐車場は部屋に付随したものではないマンションでの事例ですので、驚いています。

東京地裁平成20年11月27日判決

1事件の概要
 管理組合Xが、前区分所有者が管理費、修繕積立金、駐車場使用料、駐輪場使用料を滞納した後にマンションを競売により取得したY1およびY1に対する支払い請求訴訟中にY1からこれを買い受けたY2に対し、当該費用等並びに使用料を請求した。
 なお、管理規約には「本件マンションの敷地および本件マンションの共用部分より発生する使用料は管理組合に帰属し、その使用料は管理に要する費用に充当する。」との定めがある。

2問題点
①駐車場使用料や駐輪場使用料は法8条の「債権」にあたるか?
②Y1はマンション売却後も法8条の「特定承継人」にあたるか?

3裁判所の判断
Xの請求を認め、Y1、Y2に対し連帯して当該使用料を支払うよう命じた。最高裁も棄却し、結審済。

①についてXは権利能力なき社団であり、Xが有する債権は区分所有者全員で総有しているものと解されるから、法7条1項所定の区分所有者が規約に基づき他の区分所有者に対して有する債権に当たり、同法8条の「前条第1項に規定する債権」に該当するから、その債務者たる前区分所有者ばかりでなく、その特定承継人に対しても行使することができる。
②については
法7条および8条は、適正な管理に必要な経費等にかかる区分所有者の債務について、その履行を図るため先取特権を規定するとともに債務者たる区分所有者からの特定承継人に重畳的に債務を負担させたものである。
そして、法8条は、特定承継人に対する債権行使の手段を同法7条の先取特権の実行に限定していから、法8条の責任主体を現区分所有者たる特定承継人に限定する必然性はなく、ひとたび債務者と重畳的に債務負担すべき法的地位についた以上は区分所有権喪失後もその地位に留まらせることが債務の履行確保を図ろうとした8条の趣旨に適う。
 また、実際上も、中間者たる特定承継人は、前区分所有者が支払いを怠った費用を他の区分所有者や管理組合が肩代わりすることによって維持管理された共用部分を使用できる利益を享受する一方で、その間8条の責任も懈怠したまま区分所有権を第三者に移転したのであるから、区分所有権喪失後も8条の責任を負わせることが衡平である。なお、Y1およびY2の債務は、相互に不真正連帯債務関係に立つ。各者は債務の全部について責任を負う。

投稿者プロフィール

福井 英樹
福井 英樹福井英樹マンション管理総合事務所 代表
マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者