去る5月10日(水)の(一社)大阪府マンション管理士会定例会勉強会の福井英樹の登壇材料の一部(想定相談案件資料)をご紹介させていただきます。
想定相談案件1 某単棟型200戸のマンション 平成16年改訂標準管理規約の管理組合
相談者:修繕委員会委員(区分所有者)
内容:理事長が大規模修繕工事(秋工事9月~12月)に際して、自分の紹介会社(業界大手)を公募コンペに参加させ、数回の選考会(理事会・修繕委員会合同)を経て、最終選考会(同右)で当該会社は僅差の第2位で落選した。
しかしながら、理事長は緊急の臨時理事会(理事長以外は素人)を修繕委員会メンバー抜きで開催し、第1位入選会社をいかにも正論と思しき理由(公募条件である元請け工事実績件数中に下請けの数が入っていた等)をつけ落選させ、「大手には安心感がある。」等、他理事連を納得させ、自分の推薦会社を入選させてしまいました。
その後の調べで、当該会社は、他の某管理組合と、大規模修繕工事の際の工事不備で、訴訟係争中であることがマンション管理新聞の記事で掲載されていることが発覚し、公募条件のうちの「他の管理組合との紛争等がなく、訴訟係争中でもないこと。」の条件が満たされていないことが判明しました。
本件につき、修繕委員会から異議を申し立てると、「修繕委員会はあくまでも理事会の諮問機関であり、貴重な意見として頂戴しました。訴訟係争中ということは判決が出たのではないので、最終的に理事会で判断させていただきます。」との回答で、意見を受け入れようともしません。
この理事長の不透明な業者選択に納得がいきません。
築40年たっておりますが、管理が比較的行き届いており、今すぐに工事をする緊急性もないように思われます。
現在2月で、5月の定期総会で承認されたら、そのまま当該会社に決まってしまう。なんとか歯止めをかけたいが、方法はないものでしょうか?
助言案
規約や法律にも基づいて、覆す方法はあります。
ただ、長年、ご近所様と仲良く暮らしており、これからも同マンションで継続して平穏に仲良く生活していくことを考える時、あまり規約や法律を楯にして、闘うことはいかがなものかとも思われます。
当該件は他の管理組合でも利益相反の問題として良く見受けられる案件ですが、長いつきあいでのご近所同士のもめ事は避けたいということで、一般的に甘んじられている案件でもあります。
しかしながら、どうしても納得がいかず、不透明な選択を覆したいのであれば、第三者の立場でものが言えるマンション管理士としてはいくつかの方法をご紹介させていただきます。
①案 臨時理事会の開催
まず、監事がしっかりとした方で、問題意識のある方なら、監事に対して、もしくは半数以上の数の理事に再度呼びかけをして、理事会の業者選択の瑕疵等について説得し、理事長に対して臨時理事会の招集を請求し、1週間以内に理事長が招集しない場合は、理事会招集をした監事もしくは理事が臨時理事会を招集します。その場合の議長は招集理事の互選で決めます。
さらに、理事長が理由なく拒否した場合は、理事の半数以上の賛成で、理事長の理事長職も解職することも可能です。
臨時理事会はこのたびの業者選択に際して、最終決定した理事会決議の無効に関しての協議で、再度、新たに業者選択をするための会議となります。
その際、上位二社が公募条件が満たされていないという理由で落選とした場合に、次次点となった業者を選ぶのか、上位二社を除いて、最終協議をするのか、再度、あらためて公募等をするのかの判断をして下さい。とにかく、公明正大な透明性のある、説明責任を完遂できる業者選択をすることです。
②案 臨時総会の開催
修繕委員会メンバーの大半が本件に納得していないのなら、メンバー中心に、区分所有者総数の5分の1以上ならびに議決権数5分の1以上の区分所有者の同意を得て、当該理事会の業者選択の瑕疵についての説明責任を理事長に追及する為の臨時総会の招集通知を理事長に請求してください。ただ、理事長は瑕疵等の存在は否定しているので、
理事長が2週間以内に4週間以内の日を会日とする臨時総会の招集の通知をしない場合が想定されます。
そして、理事長が招集通知をしない場合は、招集通知をした区分所有者は連名で当該臨時総会の招集通知開催日の2週間前までに発して下さい。
議長は総会を招集した区分所有者の中から選んでください。
通知すべき事項は「第3回大規模修繕工事業者選択に際しての理事会の瑕疵の件」等としてください。
議案の内容は
理事会・修繕委員会で最終に選択した業者を公募条件が満たされていないとして落選させたにもかかわらず、自己推薦の業者も公募条件が満たされていないことが発覚したにもかかわらず、最終理事会・修繕委員会で当該会社の入選を強引に押し切った理事長に対する説明責任の追及になります。
③案 定期総会で否決する方法
5月の定期総会で否決する方法もありますが、あまりお勧めできません。
定期総会は議決権行使書で白紙委任状等「理事長に一任」の委任状が多数占めます。反対者が否定しても、当該委任状があるため可決されてしまうおそれが多々あります。
それに、修繕委員会は理事会と運命共同体でもあるので、当該定期総会でメンバーが否決するのも不適当かとも思われます。
相手方(工事業者)もあることなので、機動性も重要で、工事等の手配を遅らせることにもなり、迷惑をかけることもお勧めできません。
また、いずれの方法でも、今回の相談者様のおっしゃられるように今回の秋工事は見送り、来年以降に順延するかの選択も視野に入れておく必要があるかとも思われます。
その際、再度の公募で仕切り直し、業者選択をする際は、今回の不透明な選考を反面教師とし、修繕委員会が中心となって理事会に対して、透明性の確保と公明正大な業者選択(そもそも理事長が業者推薦をすることも利益相反行為の可能性有)の方法の意見具申の継続を実行していくことが重要だと思われます。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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